導入
当ブログにお越しいただき、ありがとうございます。現代を生きる虚無僧です。
前回の記事で、虚無僧の歴史や「実は江戸時代の公認スパイだった!」という裏話をお届けしました。その中で、「虚無僧はお経を唱える代わりに、尺八(しゃくはち)を吹いて修行する」と紹介したのを覚えているでしょうか?
皆さんは尺八のこと、どれくらいご存じですか? 「リコーダーが竹になっただけ」くらいに思っていませんか?
今回は、前回の記事で紹介したこの「尺八」について、意外と知られていない中身を簡単にご説明させていただこうと思います。
そもそも尺八とは?
尺八とは、日本の伝統的な「木管楽器(縦笛)」の一種です。
主に真竹(まだけ)の根元を使って作られており、リード(歌口の振動弁)がなく、自分の息を直接吹き口の傾斜(歌口・うたぐち)にぶつけて音を出す、非常に原始的かつ繊細な構造をしています。
名前の由来
基本の長さが「一尺八寸(いっしゃくはちすん=約54.5cm)」であることから、その略称で「尺八」と呼ばれています。
※実際には、これより短いものや長いものなど、様々なサイズ(調子)が存在します。
ちなみに私は現在尺八2本、尺九1本を所持しています。

構造と演奏の特徴
- 穴の数: 前面に4つ、背面に1つの「計5つの穴(五孔・ごこう)」しかありません。
- 音の出し方: 5つの穴を普通に「指で開け閉めするだけ」では、5つの基本音(基本的には和音階のヨナ抜き音階など)しか出ません。 それ以外のあらゆる音階(ドレミファソラシドなど)を出すためには、以下の特殊な技術が必要になります。
- 「メリ・カリ」: 首を上下に振って、吹き口に対するアゴの角度(息のあたる角度)を変えることで、音程を上下に変化させる技術(時代劇で首を振っているのはこれのためです)。
- 「半開(はんがい)」: 指の穴を半分だけ開けて音程を微調整する技術。

首振り3年ころ8年なんて言葉もあります。
尺八を吹くのに、首を振って音の加減ができるようになるのに3年、さらに細かい指の動きによってころころというよい音が出るようになるには8年かかるということ。
「地あり」と「地なし」の違い
尺八は、管の内側(内径)の処理の仕方によって大きく2種類に分かれます。
① 地あり(じあり)尺八 [現代の主流]
- 作り方: 竹の管の内側にある節を削り、そこに「地(じ)」と呼ばれる、漆や砥の粉(パテのようなもの)を何度も塗り込んで、内壁を滑らかな円錐状に整形したものです。
- 特徴: 音程が非常に正確で、大きな音が出ます。現代のドレミ音階にも合わせやすいため、ステージ演奏や洋楽とのコラボなど、現在の音楽シーンでの主流となっています。
② 地なし(じなし)尺八 [古来・虚無僧の主流]
- 作り方: 竹を切り出し、中の節を最小限にくり抜いただけのものです。内側にパテ(地)を一切塗りません。
- 特徴: 竹の内側の自然な凸凹がそのまま残るため、音程を合わせるのが極めて難しく、大きな音も出にくいです。しかし、息の漏れる音(ノイズ)が適度に混ざった、「風の音」のような非常に渋く精神的な響きが特徴です。江戸時代の虚無僧たちが修行(吹禅・すいぜん)に使っていたのは、すべてこの「地なし」です。
5つの穴を開け閉めするシンプルな構造でありながら、吹く人の技量(首の振り方や息づかい)と竹の個性がそのまま音になる、奥の深い楽器です。
尺八はどこで手に入れる?
ネットでも購入することは可能ですが、できれば実際に吹いて確かめるのが一番です。自分に合った吹き口であったり、重さを確認することが非常に大事になります。
……ただし! 習い始めは音がまったく出ないので、実際にショップで吹いたところで、違いが1ミリも判らない可能性が高いです。
私は習い始めのころ、まずは師匠のものを貸していただいて、ある程度音が出るようになってから購入しました。
本気で虚無僧するなら「地なし」一択、だけど……
ちなみに、私が持っている3本の尺八はすべて「地なし」となっています。本気で虚無僧をするなら、やっぱり「地なし」が一番のロマンだと思うからです。
しかし、この「地なし」は本当に手に入りません! 購入したくても、とにかく物がないのです。現在は作り手(職人さん)もほとんどおらず、世に出回っている尺八は9割以上が「地あり」と言っていいレベルです。
私はたまたま師匠の知り合いから譲っていただきましたが、普通に手に入れるのは困難を極めます。
なので、これから始める方が最終的に「地なし」を目指すとしても、初めは「地あり」で練習するのが一番いいのではと思います。地ありのほうが音もきれいに鳴りますし、音階も整っていて初心者向けです!
まとめ
5つの穴を開け閉めするシンプルな構造でありながら、吹く人の技量(首の振り方や息づかい)と、竹の個性がそのまま音になる奥深い世界。
私もまだまだ「首振り三年、ころ八年」の修行の身。家の中で過呼吸になりかけながら、日々竹の筒と格闘しています。
虚無僧や尺八に興味を持った方は是非一度挑戦してみてください。

